月: 2021年10月

法律による行政

今日は,事務員さんもおらん。
書面を書いて裁判所の本屋に行って,
西天満界隈をパトロールしてきた
特に異常はなく平和なもんだ。さらに天気も良い。
このご時世,なかなか旅行もいけない。
モクズガニハンターとして用水路でも回ろうか。
捕まえ方のコツをつかんだな。

30分で10匹はかたい。旬もそろそろ終わりだな。
ちなみに事務所近くの堂島川にもモクズガニはいる。

帰ってきて寛いでいると来客があった。
私が前にいた事務所の近所の先生だった。
私が弁護士になる前から何かとお世話になっていた先生で,
事件の紹介もしてくださった。
ちょうど同じタイミングで事務所を独立した。

確か行政法や知財の事件に強かったはず。
私と違って弁護士10年,
満を持して独立されたのだろう。
私が行政法と関わるきっかけともなった先生で,
学者のような論理的思考を持っておられた。
多分,一気に畳みかけるような書面を書くんだろな。
詳細は知らんけど。

行政事件の分野
これは何件かやってる。
しかし,大学に教えに行ってる関係で,本や判例を読むことが多い。
訴訟になると分類は民事訴訟だけど,
やはり相手が国や地方公共団体ということもあって特殊だな。
行政に関する依頼はあまりない。
でも行政との関わりが避けられない職種の人からの依頼はたまにあるな。
行政との関係で,
許可・特許・認可・届出・その他
また定期的にやり取りをしなければならない職種だったり,
行政に首根っこをつかまれている職種だったり・・
事件として受けるかどうかは別として,
行政法の知識は有益だ。尋ねられることも多いし。

他の事案より,行政関係の事案では,
法律の解釈論を考えることが多い。
まずは行政の行為(行政がやろうとしている行為を含む。)の法的根拠を探す。
法律による行政の原理というのがあるけど,
まずは根拠が必要。
法律に根拠があれば,行政の行為が法的に正しいのか,
法律を読んで考える。
なければ,行政指導の場合が多いけど,
そもそも許されるかを考える。

行政事件をやっておられた先の先生が,
理論や解釈論に強いのには理由があると思う。






法と道徳(MINAMATA)

ちょっと前まで法学部の学生だった事務員M
IT知識が豊富な最近の人だ。
古色蒼然をある種の美学と考える私とは対極で
議論していると面白い。

弁護士というのは法律を扱う仕事
解釈は種々あれど条文という形のあるものだ。
法と論理を駆使して仕事をしている。
ここでいう論理は社会科学分野特有のもので,
社会通念やら常識やらで間隙を埋めることはある。
しかし,きちんと説明し説得することに気持ちよさを感じたりもする。

そんな仕事をしている私は道徳の話が嫌いだ。
法律家が道徳を語ることに,
忌まわしさを感じるのだ。

事務員Мは映画 minamataを観たらしい。
それも2回。ユージンスミスの写真集も見せてもらった。


水俣病を扱った映画
製作と主演はジョニーデップ・音楽は坂本龍一。
ジャーナリストのユージン・スミスが水俣を訪れて,
メチル水銀に蝕まれた水俣の現状を写真に収めようと奔走する話らしい。
写真は雄弁だ。
信念のぶつかり合いや人の誇り,生命力。
被写体の歴史
何を夢見て誰を愛したのか,という人の人生
それが一枚に概括されている。

同業と水俣病の話をすると必ず刑法や行政法の判例の話になる。
最高裁まで争われた著名な判例が多くあるのが水俣病。
教科書に書いてあった4大公害病
判例百選掲載判例
それで知っているのが水俣病だ。
私も判例や教科書の知識しかなかった。
写真でみる水俣は,
私がそれまで見聞きしていた水俣とは違った。

公害病には行政の認定が必要になってくる。
法律上の確定があるまでは,
公害は公害ではないということ
それまでは社会的に許された事業活動なのだ。

水俣を見たユージンスミスは,
法律的に確定されなければ公害は犯罪ではないという道徳観こそが,
公害を起こす道徳観だといった。
当然,そのような道徳観が社会を支配しているわけではない。
しかし,
道徳は時にどこかへ行ってしまうことがある。
努々,忘れないようにしなければ。

学生さんが相談に来た

相談に訪れる人はいろいろ
属性も立場もいろいろ
何を夢見ているのかもいろいろ

今はいろんな人が相談に訪れる。
そのうち,
同じような人が相談に来るようになるんやろな。
弁護士との相性は大事だと思う。

先日は学生さんの相談を受けた。
前の事務所では高校生が来たこともある。
夏休みを利用してな。
そこで「弁護士になりたいです。」とかいえば可愛げがあったけど・・
相談内容は一般民事だったな。著作権法と。

先日の学生さん
聞けば大学4年生で事業をやりたいとか。
その関連での相談だった。
相談内容はさておき,
事業の着眼点は面白かった。
いろいろ制限がある中でどこまでできるんやろか。

弁護士の意見を聞く慎重さ
とりあえずやってみる行動力
ちょっとした野心
いつの間にか忘れていたな。
学生さんから教えてもらうことは結構,多い。

最初は私が弁護士兼事務員でやっていこうと思っていたけど・・
気が付けば事務員2人体制
丁寧かつ効率よくやっていきたいな。

スタッフがいると念願の忘年会ができるかもしれん。
贅沢ではあるが蟹とか食べたいな。

実は最近,モクズガニが大量に取れる場所を発見した。
住宅街の用水路なんだけど。
詳しい理由は知らんけど,
多分エサが豊富なんだろう。


網やトング,素手で簡単に捕獲できます。
中ぐらいサイズが多いけどな。
これが結構,美味しい。

ちなみに旬を迎えている高級食材上海ガニは,
チュウゴク「モクズガニ」というらしい。
見た目は同じ。
多分,味も同じかそれ以上・・
何より安定と信頼の国産。
50匹ぐらい捕まえて,
年末は事務所で蟹祭りだな。

ゴルゴさんの話

ゴルゴ13のさいとうたかを先生の訃報
ゴルゴ13は学ぶことが多い作品だ。

床屋や王将に行くと必ずゴルゴ
一話完結型の漫画は待ち時間にぱらぱらとな。
濡れ場的なシーンを見るときは,
本を90度ぐらいに閉じて周囲をきょろきょろ・・
今後も続いていくらしい。
分業制だからスピリットは確かに承継されているのだろう。

ゴルゴ13のストーリーは決まっている。
依頼者がゴルゴ13ことデューク東郷に仕事を依頼をする。
厳格なルール有
ゴルゴは困難を跳ねのけて奇跡のスナイプを決める。
依頼達成
こんな流れだ。
ストーリーを公募している時もあった。
タイムリーは話も多く世相を反映した作品もあった。

私はまだ弁護士になってそれほど立っていない。
しかし,ゴルゴ13で思い出す依頼者がいる。

私が1年目にもった国選事件の依頼者だ。

覚せい剤以外の薬物事犯でまだ年季は明けていない。
奴は被告人質問で今回は覚せい剤をしていないことを熱弁した。
前回と違って覚せい剤をしていないことを情状のつもりで言ったのだろう。
すると検察官から「違法薬物は覚せい剤だけではありません。」
と的確な指摘が入った。
食事にうるさく,刑務所はバターではなくマーガリンが出されるのを嫌っていた。
服役した後はたまに手紙をくれて,
班長になって作業服のベルトを作っているとか書いてきてたな。
私は嫌がらせのように恋愛小説や古典文学を差し入れてやった。
読んだかどうかはしらん。

奴は結構,新しいことが好きだった。
自分が入所していた多摩川少年院に手紙を出したりした。
後輩に向けて「俺のようになるな,多摩での関係は多摩で終わらせろ。」とな。
念のため情状の証拠として出した。
やはり,検察官から,
「少年院に手紙を書いてる場合じゃないですよ。」と言われた。

そんな奴には案外,文才があった。
弁護人の勧めに従い,
ゴルゴ13の新作ストーリーを書いた。
認め事件で取調べがなく,暇だったこともあるだろう。
内容は特殊詐欺を扱ったもので,
末端の受け子が捕まり,その家族が依頼者となり,
特殊詐欺の元締めを抹殺するというもの。
犯罪加害者の家族がテーマのよくある話。
私は宅下げしてもらって読んだ。
・・結構,面白かった。
組織内部での取り決めや連絡方法,
証拠の隠滅や金銭の分配・・
どこで取材したのだろうと思うぐらい,
具体的だった。
ストーリーはともかく,
組織犯罪の特色や内部の争いや奪い合い
不安や葛藤,良心の呵責などが書かれていた。
特に犯罪を行う人の中に,
正業,つまり普通に暮らす人に対する暗い羨望があった。
私には,ここが興味深かった。
同時に奴の才能に舌を巻いた。

面白い弁護活動だったな。
創作の中には作者の思いが何らかの形で出てくるもんだ。

被疑者の才能に気づかせてくれたゴルゴさん。
さいとう先生のご冥福をお祈りいたします。