商売と無縁の家庭でも,
「保証人にはなったらあかん。」と周囲の人から言われました。

実際は,人生の局面で保証人を立てるように求められることはあります。
これはなかなか頼みにくい。
しかし,事業の継続のためには資金調達も必要です。
資金調達のためには借入,そして保証が必要となってきます。

保証契約も民法改正で少し変わりました。
保証契約の書面要件は平成16年改正です。実際には保証契約が作成される場合がほとんどでしょうが,それまでは書面を作成しなくても保証契約は成立しました。
そして,今回の改正。
保証契約の改正の歴史は,
保証意思(保証債務を履行する意思)の確認の歴史です。


保証,とりわけ個人保証(保証人が法人ではなく個人)の場合,
情義(断りにくい筋から迷惑をかけないと言われ)
軽率(ついつい軽率に)
未必(自分が責任を負う事態にはならないだろう)
の流れで保証人になってしまうのです。
あとは金融系Vシネでよくある展開です。
自分が借りたわけではないのに返済義務。
保証債務の履行責任とはそういうもので,
理不尽さを帯びたものです。

今回は事業債務の保証についてお話しします。
※事業債務→貸金等債務(主に民法465条の3に出てくる債務で金銭消費貸借契約に基づく貸金債務。売買代金債務や準消費貸借契約に基づく債務は含まない。消費貸借契約に基づく貸金債務を念頭に置いているのは,よく使われて金額が高額になることが多く保証人保護の必要性が高いから)を念頭に置いて説明します。

事業債務は金額が大きい。
さらに事業の不調は突然やってくる。
保証人にとって危険なので特別な規定を設ける。という流れの改正です。
ポイントは2点
①主債務者の情報提供義務(465条の10
②公正証書による保証意思の確認(465条の6

①は主債務者から保証人への情報提供で,内容は主債務者の財産状況や他の担保に関する事項です。
怠った場合,保証人は保証契約を取消すことができます。
保証契約書には次のような規定を設けることになります。
第〇条(債務者の情報提供義務)→表明保証条項です。
 主債務者は,民法第465条の10第1項各号に規定する情報を保証人に提供したこと,及びこの情報が真実であることを,表明し保証する。

②は保証契約に先立って,保証意思を公正証書で確認することです。
この公正証書を保証意思宣明公正証書,といいます。
保証契約書には次のような規定を設けることになります。
第〇条(公正証書による保証意思の確認)
 保証人は,保証契約の締結に先立ち,民法465条の6第1項及び第2項に従い,令和〇年〇月〇日付公正証書により,保証債務を履行する意思を表示したことを確認する。
保証意思宣明公正証書は保証契約書とは別です。また,公正証書には執行認諾文言(直ちに強制執行に服する旨の陳述)を入れたくなりますが,できないと考えられております。保証意思宣明公正証書は執行証書にはならないということです。ただ,これは法律上,禁止されているものではありません。今後の実務の運用を見ていく必要なあるでしょう。

②の例外が経営者保証です。
経営者が会社等の債務を保証する場合,保証意思宣明証書の作成は不要です。
経営者の範囲は,465条の9の通りです。
役員と実質的な経営者(株式会社の場合は議決権の過半数保有)です。
それと,主債務者と共同で事業を行う配偶者も含まれます。これは実務上の要請です。
従来から融資の際に経営者保証を求めることは必ずしも適切ではないと言われ,立案段階でも議論されました。
会社が破産する場合に経営者も破産することになり,
思い切った事業展開を委縮させ早期の事業再生を阻むことになるというのが理由。
一方でモラルハザードの問題もありました。
有限責任(法人と経営者の責任は別)と経営者による財産浪費の問題です。
会社の経営者の責任は別なのに,経営者が会社財産を個人的使途に用いる。

その結果,経営者保証は従来と同じです。
今回紹介した改正は,事業債務を経営者(465条の9に定める者)以外が保証する場合に意味を持つことになります。