ゴルゴ13のさいとうたかを先生の訃報
ゴルゴ13は学ぶことが多い作品だ。

床屋や王将に行くと必ずゴルゴ
一話完結型の漫画は待ち時間にぱらぱらとな。
濡れ場的なシーンを見るときは,
本を90度ぐらいに閉じて周囲をきょろきょろ・・
今後も続いていくらしい。
分業制だからスピリットは確かに承継されているのだろう。

ゴルゴ13のストーリーは決まっている。
依頼者がゴルゴ13ことデューク東郷に仕事を依頼をする。
厳格なルール有
ゴルゴは困難を跳ねのけて奇跡のスナイプを決める。
依頼達成
こんな流れだ。
ストーリーを公募している時もあった。
タイムリーは話も多く世相を反映した作品もあった。

私はまだ弁護士になってそれほど立っていない。
しかし,ゴルゴ13で思い出す依頼者がいる。

私が1年目にもった国選事件の依頼者だ。

覚せい剤以外の薬物事犯でまだ年季は明けていない。
奴は被告人質問で今回は覚せい剤をしていないことを熱弁した。
前回と違って覚せい剤をしていないことを情状のつもりで言ったのだろう。
すると検察官から「違法薬物は覚せい剤だけではありません。」
と的確な指摘が入った。
食事にうるさく,刑務所はバターではなくマーガリンが出されるのを嫌っていた。
服役した後はたまに手紙をくれて,
班長になって作業服のベルトを作っているとか書いてきてたな。
私は嫌がらせのように恋愛小説や古典文学を差し入れてやった。
読んだかどうかはしらん。

奴は結構,新しいことが好きだった。
自分が入所していた多摩川少年院に手紙を出したりした。
後輩に向けて「俺のようになるな,多摩での関係は多摩で終わらせろ。」とな。
念のため情状の証拠として出した。
やはり,検察官から,
「少年院に手紙を書いてる場合じゃないですよ。」と言われた。

そんな奴には案外,文才があった。
弁護人の勧めに従い,
ゴルゴ13の新作ストーリーを書いた。
認め事件で取調べがなく,暇だったこともあるだろう。
内容は特殊詐欺を扱ったもので,
末端の受け子が捕まり,その家族が依頼者となり,
特殊詐欺の元締めを抹殺するというもの。
犯罪加害者の家族がテーマのよくある話。
私は宅下げしてもらって読んだ。
・・結構,面白かった。
組織内部での取り決めや連絡方法,
証拠の隠滅や金銭の分配・・
どこで取材したのだろうと思うぐらい,
具体的だった。
ストーリーはともかく,
組織犯罪の特色や内部の争いや奪い合い
不安や葛藤,良心の呵責などが書かれていた。
特に犯罪を行う人の中に,
正業,つまり普通に暮らす人に対する暗い羨望があった。
私には,ここが興味深かった。
同時に奴の才能に舌を巻いた。

面白い弁護活動だったな。
創作の中には作者の思いが何らかの形で出てくるもんだ。

被疑者の才能に気づかせてくれたゴルゴさん。
さいとう先生のご冥福をお祈りいたします。